こんにちは。花や庭を描いている佐藤あゆみです。
東北芸術工科大学で絵画を学び、その後、東京の花店でフローリストとして働いた経験を生かしながら、現在はデジタル画やアクリル画で花や庭を描いています。
花柄と聞くと、どのような模様を思い浮かべるでしょうか。
小さな花が繊細に並ぶリバティ・プリント、大きな花を大胆に描いたマリメッコの《ウニッコ》、植物が絡み合うウィリアム・モリスの装飾的なデザイン。同じ花を題材にしていても、その表現はブランドによって大きく異なります。
花の絵柄には、花の姿をそのまま写したものだけでなく、形を単純化したもの、色の組み合わせを楽しむもの、植物が育つ空間まで表現したものがあります。
この記事では、花や庭を描いている私の視点から、花の絵柄で有名な8つのブランドと、代表的なパターンの魅力をご紹介します。

花柄は好きですが、ブランドによる違いまでは考えたことがありません。



花の形だけでなく、配置や余白、色の使い方を見ると、それぞれのブランドらしさが見えてきます。
花の絵柄で有名なブランド一覧
今回ご紹介するのは、次の8ブランドです。
- マリメッコ
- リバティ
- Morris & Co.
- ローラ アシュレイ
- スヴェンスク・テン
- ミナ ペルホネン
- グッチ
- ウェッジウッド
ファッションだけでなく、テキスタイル、壁紙、インテリア、食器まで、花の絵柄が暮らしの中でどのように使われているかにも注目してみましょう。


花の絵柄の魅力|暮らしの中に小さな庭をつくる
花の絵柄には、暮らしの中に自然の気配を取り入れられる魅力があります。
一輪の花を大きく描けば、その形や色が強く印象に残ります。小さな花を繰り返して並べれば、野原や庭のような広がりが生まれます。同じ花を題材にしても、花の大きさや配置、余白、色の組み合わせによって、柄の印象は大きく変わります。


私もこれまで、花や葉を組み合わせた作品や、画面全体に花が咲く花柄を制作してきました。
花柄は、洋服や壁紙、食器などに使われることで、眺めるだけの絵とは少し違った存在になります。毎日の暮らしに寄り添いながら、身の回りに小さな庭をつくってくれるところが、花の絵柄の魅力だと思います。
マリメッコ|大胆な花を暮らしの中へ


画像出典:マリメッコ公式・ウニッコ
《ウニッコ》に描かれた大きなケシの花
フィンランドで生まれたマリメッコは、大胆な色彩と明快な形のプリントで知られるブランドです。
なかでも有名なのが、テキスタイルデザイナーのマイヤ・イソラが1964年に制作した《ウニッコ》です。「ウニッコ」はフィンランド語でケシの花を意味します。
丸みのある大きな花びらと、中央に置かれた黒い花芯。花の細かな構造や陰影は省かれていますが、ひと目で花だと分かる力強さがあります。
衣服やバッグだけでなく、カーテン、クッション、食器などにも展開され、花の絵柄を日常の風景へ取り入れた代表的なデザインです。
花の形を単純にすることで生まれる強さ
花を描くとき、細部まで描き込むほど花らしくなるとは限りません。
《ウニッコ》は花の形を思い切って単純化することで、色とシルエットの美しさを際立たせています。大きさや向きを少しずつ変えて花を並べることで、単純な形の中にも心地よいリズムが生まれています。
花を象徴的な形に置き換えることも、花を表現する一つの方法なのだと感じます。
リバティ|小さな花がつくる繊細な世界


画像出典:リバティ公式・ベッツィ
暮らしに広がったリバティ・プリント
イギリスのリバティは、繊細な花柄を中心としたプリント生地で広く知られています。
小さな花や葉が布一面に敷き詰められた柄が多く、代表的なデザインには《ベッツィ》《エミリー》《ソープ》などがあります。遠くから見ると一つの色彩の面に見え、近づくと一輪ずつ異なる花の姿が現れます。
草花を細い線で丁寧に描きながら、洋服や小物にしたときに美しく見えるよう、花の大きさや密度が細かく調整されています。
小花を繰り返すことで生まれる景色
リバティの花柄を見ていると、一輪の花を鑑賞するというより、たくさんの花が咲く野原を眺めているような気持ちになります。
小さな花を画面全体に描くときは、単調にならないよう、花の向きや色、間隔を少しずつ変えることが大切です。リバティの柄には、繰り返しの中にも自然な揺らぎがあります。
一輪では目立たない花も、重なり合うことで豊かな景色になる。その魅力を感じられるブランドです。
Morris & Co.|植物が絡み合う装飾の世界


画像出典:Wikimedia Commons
ウィリアム・モリスが残した植物模様
Morris & Co.は、イギリスのデザイナー、ウィリアム・モリスのデザインを受け継ぐブランドです。
モリスは身近な草花や鳥を観察し、それらを壁紙やテキスタイルのための模様へと構成しました。代表的なデザインには、《いちご泥棒》《ピンパーネル》《柳の枝》などがあります。
花や葉、茎が画面の中で途切れることなくつながり、植物全体が一つの世界をつくっています。装飾性が高い一方で、その形には自然をよく観察した跡が残されています。
自然を写すのではなく再構成する
モリスの花柄は、目の前の植物をそのまま写したものではありません。花や葉の特徴を観察したうえで、画面全体が調和するように配置し直しています。
どこから見ても植物の流れが続き、視線が自然に画面の中を巡る構成には、庭を歩いているような感覚があります。
私も花の絵を描くときも、実際に見た景色をそのまま再現するだけでなく、記憶に残った花や色を組み合わせることがあります。モリスの作品からは、自然を自分の中で組み直し、新しい景色として表現する面白さを学べます。
ローラ アシュレイ|英国の庭を思わせる花柄


画像出典:ローラ アシュレイ公式
暮らしに寄り添うロマンティックな花
ローラ アシュレイは、英国の田園風景や伝統的な暮らしを思わせる花柄で知られるブランドです。
バラや野の花を取り入れた柄には、淡く落ち着いた色彩が多く使われています。洋服だけでなく、カーテン、壁紙、寝具、家具など、部屋全体を花柄でコーディネートできることも特徴です。
華やかでありながら主張が強すぎず、長い時間を過ごす空間に穏やかな雰囲気をもたらします。
花のある暮らしを一つの世界として描く
ローラ アシュレイの花柄には、花そのものだけでなく、「花に囲まれて暮らすこと」への憧れが表れているように感じます。
カーテンや壁紙、クッションなどに同じ世界観を広げることで、部屋そのものが一つの庭のようになります。
花の絵は壁に飾るだけでなく、布や生活用品を通して暮らしの中へ取り入れることもできます。花が生活の背景にあることで、日常の見え方まで少し変わるのではないでしょうか。
スヴェンスク・テン|色彩豊かな植物の楽園


画像出典:スヴェンスク・テン公式・Tulpaner
ヨーゼフ・フランクが描いた花と植物
スウェーデンのインテリアブランド、スヴェンスク・テンでは、建築家・デザイナーのヨーゼフ・フランクが手がけた数多くのテキスタイルが現在も親しまれています。
フランクのデザインには、花、葉、果実、鳥などが画面いっぱいに描かれています。実在する植物をもとにしながらも、色や大きさは自由に変化し、現実には存在しない豊かな庭のような世界が広がります。
植物を多く描き込みながら窮屈に見えないのは、モチーフの間に流れがあり、それぞれの色が響き合っているためです。
記憶と想像から生まれる庭
フランクの花柄には、植物図鑑のような正確さとは異なる魅力があります。さまざまな土地や季節の植物が一つの画面に集まり、記憶と想像から生まれた庭のように見えます。
フランクは現実の植物を出発点にしながら、自由な色や構成によって新しい庭を作っています。



実際には存在しない組み合わせでも、花柄として成立するのですね。



記憶に残った色や花を自由に組み合わせることで、その人にしか描けない庭が生まれるのだと思います。
ミナ ペルホネン|手仕事の温かさを残す花柄


画像出典:ミナ ペルホネン公式・anemone
刺繍や線で表された身近な花
ミナ ペルホネンは、デザイナーの皆川明が設立した日本のブランドです。オリジナルのテキスタイルを中心に、衣服やバッグ、インテリア用品などを展開しています。
花を題材にしたデザインには、《anemone》《rosy》《flower circle》などがあります。
均一で滑らかな線に整えすぎず、手で描いた線や刺繍の凹凸を残しているところが特徴です。同じ花が並んでいても、一輪ずつ表情が異なって見えます。
不完全な線が生む花の表情
植物には、まったく同じ形の花や葉はありません。線の揺れや形の違いを残すことで、模様でありながら、そこに咲いている花の気配が伝わってきます。
デジタルで花を描くと、線や形を簡単に整えることができます。しかし、整えすぎると、花が持っていた動きや温度まで失われてしまうことがあります。
ミナ ペルホネンの花柄を見ると、少し不揃いな線や余白も表現の一部であり、それが人の手から生まれた温かさにつながることに気づかされます。
グッチ|一枚のスカーフから生まれた《フローラ》


画像出典:グッチ公式・フローラの壁紙
四季の花が咲き広がる華やかなデザイン
グッチを代表する花柄の一つが《フローラ》です。
《フローラ》は、1966年にイラストレーターのヴィットリオ・アッコルネロによってデザインされました。色とりどりの花や葉、昆虫が広がる、繊細で華やかな絵柄です。今回掲載している壁紙では、オリジナルの《フローラ》が淡いピンクの背景によって新しく解釈されています。
一つひとつのモチーフは細密に描かれていますが、背景に十分な余白があるため、軽やかさも感じられます。その後、スカーフだけでなく、衣服、バッグ、香水のパッケージなどにも使われ、グッチを象徴するデザインの一つになりました。
描き込みと余白のバランス
《フローラ》には多くの種類の花が描かれていますが、すべての場所が花で埋め尽くされているわけではありません。
細かく描かれた花の集まりと余白が交互に現れることで、一つひとつの花が見やすくなり、画面全体にも呼吸が生まれています。
花をたくさん描こうとすると、つい画面を埋めたくなります。しかし、花を美しく見せるためには、何も描かない空間も大切です。《フローラ》からは、描き込むことと余白を残すことのバランスを学べます。
ウェッジウッド|食卓に咲く英国の花


画像出典:ウェッジウッド公式・柄の紹介
《ワイルド ストロベリー》に描かれた野の植物
イギリスの陶磁器ブランド、ウェッジウッドには、花や植物を描いた数多くの食器があります。
特に広く知られているのが《ワイルド ストロベリー》です。白い器の上に、野イチゴの実や白い花、緑の葉が描かれ、縁には金彩が施されています。
植物を観察して描いたような繊細さがありながら、食卓に置いたときに華やかに見える構成になっています。カップの曲面や皿の縁に沿うように植物が配置されているところにも、平面の絵とは違った工夫があります。
使うことで完成する花の絵柄
食器に描かれた花は、眺めるだけのものではありません。料理や飲み物と組み合わされ、人が手に取り、日常の中で使うことで、その魅力が完成します。
カップを回すと別の花が現れ、テーブルに複数の器を並べると、花の模様が食卓全体へ広がっていきます。
花の絵は、美術館や壁の上だけにあるものではありません。毎日使う器の中にも花の表現があり、暮らしの時間を静かに彩ってくれます。
花の絵柄を見るときに注目したいポイント
花柄を選ぶときは、「好き」「かわいい」という感覚を大切にしながら、次の点にも注目してみてください。
花の大きさ
大きな花は、明るく大胆な印象を与えます。小さな花を繰り返した柄は、繊細で穏やかな雰囲気になります。
写実的か、単純化されているか
実際の花に近い描写からは、植物を観察する楽しさが感じられます。一方、形を単純化した花柄では、色やシルエットの面白さが際立ちます。
花の密度と余白
画面いっぱいに花を描いた柄は、庭に包まれるような豊かさがあります。余白を多く取った柄では、一輪ずつの花が印象的に見えます。
使われている色
同じ花でも、鮮やかな色なら現代的に、落ち着いた色ならクラシックに見えます。花そのものの色に縛られず、自由な配色を楽しめることも花柄の魅力です。
まとめ|ブランドの花柄には、それぞれの庭がある
今回ご紹介したブランドは、いずれも花を題材にしていますが、その表現は大きく異なります。
マリメッコは花の形を大胆に単純化し、リバティは小さな花が集まる繊細な景色をつくっています。ウィリアム・モリスやヨーゼフ・フランクのデザインには、植物がどこまでも育っていくような世界が広がります。
花の絵柄には、デザイナーが見た花だけでなく、育った土地の自然や記憶、理想とする暮らしまで映し出されているのだと思います。
私も花や庭を描くとき、目の前にある植物だけでなく、これまでに出会った風景や心に残った色を重ねています。
気になる花柄を見つけたら、花の名前だけでなく、その形や色、並べ方にも目を向けてみてください。その柄を生み出した人が思い描いた、一つの庭が見えてくるかもしれません。



